教育 Education

基礎人体機能構造学医学部2年前期)

学習目標(到達目標)

本講義では細胞・組織の微細構造を学び、さらに形態と機能との関連を生理学、生化学、物理学、化学、微生物学の観点から統合的に理解する考え方を学ぶ。
以下は、医学教育モデル・コア・カリキュラムより人体構造学に関連する箇所をもとに抜粋・改変、さら追加したものであり、本講義の学修目標とする。

1.生命科学の講義・実習で得た知識を基に、病態の解析ができる。
2.細胞膜、細胞内小器官の構造と機能との関連を説明できる。
3.原核細胞と真核細胞の構造と機能の違いを説明できる。
4.上皮組織と線の構造と機能を説明できる。
5.支持組織を構成する細胞と細胞間質(線維成分と基質)を説明できる。
6.血管とリンパ管の微細構造と機能を説明できる。
7.神経組織の微細構造を説明できる。
8.筋組織について、骨格筋、心筋、平滑筋の構造と機能を対比して説明できる。
9.細胞膜について物理化学的な側面を理解する。
10.心筋の形態と機能、血管の形態と生化学および流体力学との一連のつながりを理解し、疾患を科学的に理解するための基礎を身につける。

 

授業概要(教育目的)

人体は特有の機能を持つ器官から成り立ち、器官は特有の機能を持つ組織の組み合わせにより成り立っている。組織も同様に様々な機能を持つ細胞から成り立ち、細胞はその機能と連関して細胞内小器官の構成が異なる。このように肉眼および顕微構造は、細胞や組織・器官の機能を反映している。形態学的構造と細胞や組織の機能との密接な関係について、基礎科学ならびに基礎医学を駆使して結びつけ、病態を理論的に理解するための基礎的な考え方を身につける。また、真核生物と原核生物の構造・機能の違いから、形態構造と機能との関連を知る重要性を理解する。

 

授業内容

形態学的構造と細胞や組織の機能を関連づけて理解できるよう以下の内容を行う。
1.動物細胞の細胞内小器官の構成と細胞機能との関連を、原核生物と比較しながら学ぶ。
2.講義と組織実習を行い、上皮組織・支持組織・筋組織・神経組織・造血系の形態学的特徴と機能との関連を学ぶ。
3.以下の2つを例にとって、形態学・物理学・化学・生理学・生化学的側面から各細胞や組織の構造と機能・病態との関連を統合的に学ぶ。
①2分子膜が形成されるしくみなど細胞膜の物理化学的側面
②心血管の構造と血流動態・病態との関連
以上により、各自が自然科学・基礎医学の知識を融合し、細胞や組織の形態学的特徴と機能とを理解できるよう授業を進める。


 

人体構造学医学部2年後期)

学習目標(到達目標)

人体各器官の正常構造を、その機能や発生と関連づけて理解する。
以下は、医学教育モデル・コア・カリキュラムより人体構造学に関連する箇所を抜粋・一部改変したものであり、本講義の学修目標とする。

医学的知識と問題対応能力
◎課題探求・解決能力
1.必要な課題を自ら発見できる。
◎学修の在り方
1.講義、国内外の教科書・論文、検索情報等の内容について、重要事項や問題点を抽出できる。
科学的探究
◎医学研究への志向の涵養
1.抽出した医学・医療情報から新たな仮説を設定し、解決に向けて科学的研究に参加することができる。
個体の構成と機能
◎器官の位置関係
1.器官の位置関係を方向用語(上下、前後、内・外側、浅深、頭・尾側、背・腹側)で説明できる。

人体各器官の正常構造と機能
◎造血器・リンパ系
1.脾臓、胸腺、リンパ節、扁桃とPeyer板の構造と機能を説明できる。
◎神経系
1.脳の血管支配を説明できる。
◎皮膚系
1.皮膚の組織構造を図示して説明できる。
2.皮膚の細胞動態と角化の機構を説明できる。
◎運動器(筋骨格)系
1.骨・軟骨・関節・靱帯の構造と機能を説明できる。
2.頭頚部の構成を説明できる。
3.脊柱の構成と機能を説明できる。
4.四肢の骨格、主要筋群の運動と神経支配を説明できる。
5.骨盤の構成と性差を説明できる。
6.骨の成長と骨形成・吸収の機序を説明できる。
7.姿勢と体幹の運動にかかわる筋群を概説できる。
8.抗重力筋を説明できる。
9.体幹と四肢の骨格と筋の形成過程を概説できる。
10.鰓弓・鰓囊の分化と頭・頸部と顔面・口腔の形成過程を概説できる。
◎循環器系
1.心臓の構造と分布する血管・神経、冠動脈の特徴とその分布域を説明できる。
2.心筋細胞の微細構造と機能を説明できる。
3.体循環、肺循環と胎児・胎盤循環を説明できる。
4.大動脈と主な分枝(頭頚部、上肢、胸部、腹部、下肢)を図示し、分布域を概説できる。
5.主な静脈を図示し、門脈系と上・下大静脈系を説明できる。
6.胸管を経由するリンパの流れを概説できる。
7.心血管系の形成過程を説明できる。
◎呼吸器系
1.気道の構造、肺葉・肺区域と肺門の構造を説明できる。
2.肺循環と体循環の違いを説明できる。
3.縦隔と胸膜腔の構造を説明できる。
4.呼吸筋と呼吸運動の機序を説明できる。
5.肺胞におけるガス交換と血流の関係を説明できる。
6.呼吸器系各器官の形成過程を概説できる。
◎消化器系
1.各消化器官の位置、形態と関係する血管を図示できる。
2.腹膜と臓器の関係を説明できる。
3.食道・胃・小腸・大腸の基本構造と部位による違いを説明できる。
4.消化管に対する自律神経の作用を説明できる。
5.肝の構造と機能を説明できる。
6.歯、舌、唾液腺の構造と機能を説明できる。
7.消化管各組織の構造と機能を関連づけて説明できる。
8.消化器系各器官の形成過程を概説できる。
◎腎・尿路系
1.腎・尿路系の位置・形態と血管分布・神経支配を説明できる。
2.腎の機能の全体像やネフロン各部の構造と機能との関連を概説できる。
3.腎糸球体における濾過の機序を説明できる。
4.泌尿器系各器官の形成過程を概説できる。
◎生殖器系
1.生殖腺の発生と性分化の過程を説明できる。
2.男性生殖器の発育の過程を説明できる。
3.男性生殖器の形態と機能を説明できる。
4.精巣の組織構造と精子形成の過程を説明できる。
5.陰茎の組織構造と勃起・射精との関係を説明できる。
6.女性生殖器の発育の過程を説明できる。
7.女性生殖器の形態と機能を説明できる。
8.性周期発現と排卵の機序を説明できる。
9.乳房の構造と機能を説明できる。
10.生殖器系各器官の形成過程を概説できる。
◎内分泌・栄養・代謝系
1.各内分泌器官の位置を図示し、そこから分泌されるホルモンを列挙できる。
2.視床下部ホルモン・下垂体ホルモンの名称、作用と相互関係を説明できる。
3.甲状腺・副甲状腺・副腎・膵島の構造を説明できる。
4.内分泌器官の発生過程を概説できる。
◎頭頸部
1.頭頸部の筋、血管・神経支配を概説できる。
2.歯や顎関節、唾液腺の構造を説明できる。
3.鰓弓・鰓囊の分化と頭・頸部と顔面・口腔の形成過程を概説できる。
◎眼・視覚器系系
1.眼球と付属器の構造と機能を説明できる。
◎耳鼻・咽喉・口腔系
1.外耳・中耳・内耳の構造を図示できる。
2.聴覚・平衡覚の受容の仕組みと伝導路を説明できる。
3.口腔・鼻腔・咽頭・喉頭の構造を図示できる。
4.喉頭の機能と神経支配を説明できる。
5.味覚・嗅覚の受容の仕組みと伝導路を説明できる。

 

授業概要(教育目的)

本講義では、人体解剖学、人体組織学、人体発生学を「人体構造学」として一括して総合的に講義する。上記学習目標の達成のために、次の6分野に分け講義と実習を行う。

(1)運動器(筋骨格)系、(2)循環器系、(3)呼吸器系、
(4)消化器系、(5)頭頸部・内分泌・感覚器系、(6)泌尿生殖器系

(1)「運動器系」では、骨格・関節・筋肉の構造と機能を講義と骨学実習を通じて理解する。(2)-(6)のその他の系統別講義では、肉眼的な構造(肉眼解剖学)と組織構造(組織学)を器官の形成過程と関連づけて有機的に学習する。このため講義に加え顕微鏡実習を行う。

 

授業内容

人体の肉眼的および組織学的な正常構造について、発生や老化・各臓器の機能との関連が理解できるよう講義を進める。また、病理や臨床診断・治療との関連にも触れる。さらに、将来的に臨床で役立つ知識や考え方を学ぶため、心臓血管外科および整形外科専門医による講義を行い、臨床的な視点を涵養する。


 

人体構造学実習医学部2年後期)

学習目標(到達目標)

次の3つを学習目標の柱とする。
1.人体の正常な三次元構造および臓器相互の空間的位置関係を自らの目と手を用いて理解する。
2,グループで問題解決にあたる手法を実践的に学ぶ。
3.献体していただいた方とその御家族の意思を自らの心で感じ取り、感謝の意と期待に応える意欲を強く持つ。
以下は医学教育モデル・コア・カリキュラムより人体構造学に関連する箇所を抜粋・一部改変したものであり、上記1に関する具体的な到達目標とする。

医師として求められる基本的な資質・能力
◎医の倫理と生命倫理
1.臨床倫理や生と死に関わる倫理的問題を概説できる。

◎課題探求・解決能力
1.必要な課題を自ら発見できる。
2.自分に必要な課題を、重要性・必要性に照らして順位付けできる。
3.課題を解決する具体的な方法を発見し、課題を解決できる。
4.課題の解決に当たり,他の学修者と協力してよりより解決方法を見出すことができる。
5.適切な自己評価ができ、改善のための具体的方策を立てることができる。

◎学修の在り方
1.得られた情報を統合し、客観的・批判的に整理して自分の考えをわかりやすく表現できる。
2.実験・実習の内容を決められた様式に従って文書と口頭で発表できる。
3.後輩等への適切な指導が実践できる。

◎コミュニケーション能力
1.コミュニケーションを通じて良好な人間関係を築くことができる。
個体の構成と機能

◎器官の位置関係
1.器官の位置関係を方向用語(上下、前後、内・外側、浅深、頭・尾側、背・腹側)で説明できる。

人体各器官の正常構造と機能
◎神経系
1.脳の血管支配を説明できる。

◎運動器(筋骨格)系
1.骨・軟骨・関節・靱帯の構造と機能を説明できる。
2.頭頚部の構成を説明できる。
3.脊柱の構成と機能を説明できる。
4.四肢の骨格、主要筋群の運動と神経支配を説明できる。
5.骨盤の構成と性差を説明できる。
6.姿勢と体幹の運動にかかわる筋群を概説できる。
7.抗重力筋を説明できる。

◎循環器系
1.心臓の構造と分布する血管・神経、冠動脈の特徴とその分布域を説明できる。
2.大動脈と主な分枝(頭頚部、上肢、胸部、腹部、下肢)を図示し、分布域を概説できる。
3.主な静脈を図示し、門脈系と上・下大静脈系を説明できる。
4.胸管を経由するリンパの流れを概説できる。

◎呼吸器系
1.気道の構造、肺葉・肺区域と肺門の構造を説明できる。
2.縦隔と胸膜腔の構造を説明できる。
3.呼吸筋と呼吸運動の機序を説明できる。

◎消化器系
1.各消化器官の位置、形態と関係する血管を図示できる。
2.腹膜と臓器の関係を説明できる。
3.食道・胃・小腸・大腸の基本構造と部位による違いを説明できる。
4.肝の構造と機能を説明できる。
5.歯、舌、唾液腺の構造と機能を説明できる。

◎腎・尿路系
1.腎・尿路系の位置・形態と血管分布・神経支配を説明できる。

◎生殖器系
1.男性生殖器の形態と機能を説明できる。
2.女性生殖器の形態と機能を説明できる。
3.乳房の構造と機能を説明できる。

◎内分泌・栄養・代謝系
1.各内分泌器官の位置を図示し、そこから分泌されるホルモンを列挙できる。

◎頭頸部
1.頭頸部の筋、血管・神経支配を概説できる。
2.歯や顎関節、唾液腺の構造を説明できる。

◎眼・視覚器系系
1.眼球と付属器の構造と機能を説明できる。

◎耳鼻・咽喉・口腔系
1.外耳・中耳・内耳の構造を図示できる。
2.口腔・鼻腔・咽頭・喉頭の構造を図示できる。
3.喉頭の機能と神経支配を説明できる。

 

授業概要(教育目的)

4〜5人ずつのグループに分かれ、1グループで1体の御遺体を解剖する。人体各部位の立体的構造および臓器のつながりなどを理解し、臨床上重要となる構造物についても理解を深める。また、ご遺体の解剖をとおして生命の尊厳や人への敬意と思いやりを学び、医療人を目指す者としての倫理観を養う。

 

授業内容

「グラント解剖実習」に沿いグループ内およびグループ間で協力して、教員の援助を得ながら自らが各構造を剖出・考察する自己主導型学習である。したがって、予習は必須である。各構造の立体的な配置や個体差を意識しながら解剖を進めていく。教員によるミニレクチャーも必要に応じて行う。臨床医による指導により臨床的視点を養い、臨床実習や診療・研究の土台となる知識も学んでいく。第3学年次の解剖体慰霊法要は人体構造学実習の締め括りである。したがって、全員出席とする。脳の解剖は神経解剖で行う。